やさしい遺産分割協議のしかた
2009.8.10
お亡くなりになった方の相続が発生すると、まず何から手をつけたらいいのか、わからなくなってしまうことはありませんか。
(1)まず、お亡くなりになった方(被相続人といいます。)のお身内の方がいるか、どのような財産を遺しているか、を調査するところから始まります。
@被相続人のお身内で、相続する権利をもっている方を推定相続人といいます。
この推定相続人は、戸籍を調べることによって、確定することが必要です。
A被相続人が遺していかれた財産のことを被相続財産といいます。
この被相続財産は、不動産や預貯金などのプラス財産と、住宅ローンや個人的な借金などのマイナス財産があります。
遺産分割協議をするにあたっては、推定相続人と被相続財産の調査を行い、それぞれ確定させていくことが前提となります。
(2)遺産分割協議とは、推定相続人の間で実際に話し合いをするなどして、被相続財産をどのように分け合ったらよいか、を協議することをいいます。
この協議においては、遺産の種類や性質、各相続人のさまざまな事情等をよく考慮した上で、合意することが大切です(民法第906条)。
@具体的な相続分については、法律で定められたもの(法定相続分といいます。民法第900条)に従って分割する方法がありますが、相続人の間で法定相続分とは異なった相続分で合意する方法もあります。どちらの方法であっても、相続人が合意しているのであれば有効に成立します。
Aただし、推定相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合を除き、配偶者や子、あるいは親が相続する場合には、最低限守られるべき権利(遺留分といいます。民法第1028条)がありますので、これを侵害しないよう配慮して、具体的な相続分を決定するようにして下さい。
(3)法定相続分と遺留分の計算方法については、推定相続人によって異なりますが、ここでは、配偶者Aと子B・Cの2人が相続人となるケースについて、実際に計算してみましょう。
@まず、法定相続分は、Aが1/2、BとCはそれぞれ1/4ずつとなります(民法第900条)。そして、遺留分はAが1/4、BとCは1/8ずつとなります(民法第1028条第1項第2号)。
A次に、相続財産のうち、プラス財産が土地1,000万円、建物400万円、預貯金2,000万円、マイナス財産は借金が1,000万円あるとします。
Bこのような場合、プラス財産の合計からマイナス財産の合計を差し引きしますと、被相続財産は、合計2,400万円となります。
C法定相続分に従って計算すると、Aは1,200万円、BとCはそれぞれ600万円ずつとなります。遺留分は、Aが600万円、BとCはそれぞれ300万円です。
D遺産分割協議によって、Aが土地、建物、借金を相続し、BとCは預貯金を半分ずつ分け合うことで合意したものとします。
Eそこで、A、B、Cについて具体的な相続分を計算すると、
A 土地1,000万円 + 建物400万円 − 借金1,000万円 = 400万円
B 預貯金2,000万円 × Cと半分ずつ = 1,000万円
C 預貯金2,000万円 × Bと半分ずつ = 1,000万円
となります。
遺留分については、Aには600万円認められていますが、これが侵害されていますので、Aの遺留分を配慮してBとCはそれぞれ100万円ずつ負担し、BからAへ、それからCからAへ分配することになります。
この遺留分を確保したいA(遺留分権利者といいます。)は、権利を主張して自ら回復することができますが、確保することを希望しない場合には遺留分を主張しなくても構いません。
但し、遺留分を主張(遺留分減殺請求といいます。)できる期間は、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します(相続開始の時から10年を経過したときも同様です)ので、注意が必要です(民法第1042条)。
(文責:行政書士小松原励)
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